土地持ちこそ遺言書が必要な理由とは?相続トラブルを防ぐための基礎知識と書き方のポイント

totimotiyuigonsyohituyou 遺言・家族信託

「うちは家族仲もいいし、相続で揉めることなんてないと思う」

そう考えて、遺言書を書かずに亡くなった地主さんのご家庭が、
実は土地を巡って深刻な“争族”トラブルに発展するケースが後を絶ちません。

遺言書は、資産が多い人ほど必要になります。
特に、土地や不動産を複数所有している地主さんの場合は、**その「分けづらさ」や「価値の変動性」**が原因で、相続が一気に複雑になるのです。

この記事では、
「なぜ土地を持っている人ほど遺言書が必要なのか?」
「書かないとどうなるのか?」
「どんなことを書いておけばいいのか?」
を分かりやすくお伝えします。

1. なぜ地主には遺言書が必要なのか?

分けづらい資産の代表が「土地」

現金であれば、1,000万円を3人の子に分けるのは簡単です。
ですが、評価額1,000万円の土地を3人に分けるのは至難の業です。

理由は以下のとおり:

土地は分筆できるとは限らない

土地の形・立地・面積で価値がバラバラ

活用方法や思い入れも人によって異なる

売却も簡単ではない(農地、借地権、接道条件など)

つまり、遺産分割でもめやすい代表格が「土地」なのです。

「土地が複数ある=分けやすい」は勘違い

「土地がたくさんあるから、それぞれに分ければいい」と思いがちですが、実際には…

価値に大きな差がある(駅近の貸地 vs 山林など)

賃貸収入のある土地とない土地がある

相続税評価額と実勢価格が乖離している場合がある

このように、不公平感が生まれやすく、争いの原因になりやすいのです。

2. 遺言書がないと、どうなる?

遺言書がない場合、遺産は法定相続分に基づいて、相続人全員で協議して分ける(遺産分割協議)ことになります。

地主さんのご家族では、次のような問題がよく起こります。

遺産分割協議がまとまらない

たとえば…

長男が「自分が今も管理している土地は自分に欲しい」と主張

次男が「貸地の収益がある土地が欲しい」と反論

三女が「公平に売って分けよう」と主張

→ 結果:話し合いがこじれて不成立に
 → 不動産の名義変更も、税務申告も進められず、相続手続きがストップしてしまう

共有名義になってしまう

協議がまとまらずに妥協案として**「土地を兄弟3人で共有にする」**というケースもあります。
しかし、不動産の共有はトラブルの火種です。

誰かが売りたいと言っても他の共有者が反対したら売れない

固定資産税は代表者が支払って、後で折半するなど手間がかかる

将来的に孫世代に相続されて“共有者が増殖”すると、さらに分割しにくくなる

二次相続・三次相続で争いが泥沼化する

たとえば、親から共有名義で相続した土地を、さらにその子どもが複数人で相続すると、名義人が5人、6人…と増えていきます。
こうなると、売却も、利用も、相続もますます難しくなり、「手がつけられない不動産」と化してしまいます。

3. 遺言書があると何が違うのか?

遺言書があれば、こうしたトラブルを生前に防ぐことが可能になります。

遺言書の効果とは?

1.誰にどの財産を相続させるかを自分で指定できる

2.相続人全員の合意がなくても、遺言書の通りに相続できる

3.遺産分割協議が不要になる

4.特定の財産だけ、特定の相続人に残すことができる

5.誰かに「遺贈」して、法定相続人以外に渡すこともできる

地主にとってはどう有利?

貸地や収益不動産を、管理実績のある子に集中させることができる

農地を、後継者として営農している子に渡すことができる

評価の低い土地を公平の観点で他の子に配分することも可能

トータルバランスで不公平感を減らす分け方ができる

つまり、相続後のトラブル防止だけでなく、土地活用の継続性・経済的合理性も確保できるのです。

4. 遺言書を書くときの注意点

いざ書こうと思っても、内容に不備があると無効になることもあります。
ここでは、地主が遺言書を書く際に意識すべきポイントを紹介します。

自筆か、公正証書か?

方式 特徴
自筆証書遺言 手書きで作成。費用はかからないが、形式不備で無効になるリスクあり。法務局での保管制度あり(2020年~)
公正証書遺言 公証役場で公証人に作成してもらう。確実性が高く、紛失・無効リスクも低い。費用はかかるが推奨

地主・農家の方は資産が多く、相続額も大きいケースが多いため、公正証書遺言をおすすめします。

不動産は正確な表記

土地や建物を遺言書に記載する際は、登記簿どおりに所在地・地番・面積を正確に記載することが重要です。
曖昧な記載では、「どの土地のことか不明」と判断されて無効になることもあります。

遺留分への配慮も忘れずに

たとえば「長男にすべての土地を相続させる」と書いたとしても、他の相続人には遺留分(最低限の取り分)があります。
これを侵害すると、「遺留分侵害請求」を受けて、結局争いに発展することも。

そのため、バランスや理由づけ、必要に応じて代償金の設定(現金で差額調整)なども検討しましょう。

5. 遺言書の文例(地主向け)

遺言書

私は下記のとおり遺言します。

第1条
東京都〇〇区〇〇町〇丁目〇番〇 地番の宅地(登記簿上の面積 150㎡)およびその上にある建物を、長男〇〇〇〇(昭和50年1月1日生)に相続させる。

第2条
千葉県〇〇市の山林(地番〇番〇、面積2,000㎡)を、次男〇〇〇〇(昭和52年5月5日生)に相続させる。

第3条
遺言執行者として、長男〇〇〇〇を指定する。

令和〇年〇月〇日
東京都〇〇区〇〇町〇丁目〇番〇
氏名 〇〇〇〇(自署)
印(実印)

6. まとめ:土地持ちは「資産家」である前に「準備家」であるべき

地主や不動産オーナーにとって、遺言書は家族への“最後の意思表示”であり、最善のトラブル回避策です。

土地は分けにくく、争いを招きやすい資産です。
だからこそ、自分の思いと、残された家族の未来のために、事前に「分け方」を示しておくことが大切です。

【今日のまとめ】

✅ 土地は「分けづらく、争いになりやすい資産」
✅ 遺言書があるだけで、遺産分割の争いを大幅に減らせる
✅ 特に地主には、公正証書遺言+代償金の工夫が効果的
✅ 書かないリスクは“共有地”や“分割協議の不成立”という現実に
✅ 遺言書は“家族の未来に対する最高の贈り物”

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