「親から相続した農地を売る予定だけど、相続税はどうなる?」
「そもそも農地を売ると何の税金がかかるの?」
「特例や控除ってあるの?」
こうした疑問を持つ地主や農家の方は多いのではないでしょうか。
農地は相続税の評価額が安くなる特例が多い反面、売却や転用の際に課税の影響が大きくなることがあります。
とくに「農地=相続税対策になる」と思っていたのに、売却で逆に税金がかかるケースも。
この記事では、
農地を売った場合にかかる税金の種類
相続税とどう関係してくるのか
節税につながる特例の有無
よくある勘違いや注意点
を、わかりやすく解説していきます。
1. 農地を売ったときにかかる税金とは?
農地を売却した場合、相続税ではなく「所得税・住民税」が主にかかります。
その内訳は以下の通りです。
種類 | 内容 |
所得税 | 譲渡益(もうけ)に対して課税される |
住民税 | 同じく譲渡益に対して課税される |
印紙税 | 売買契約書に貼る印紙 |
登録免許税 | 登記変更時(所有権移転)にかかる |
そもそも「相続税」は、農地をもらったときに一度だけ
相続税は、被相続人の死亡時に農地などの財産を取得したときに発生します。
つまり、農地を相続した「その時」にすでに相続税を払っているか、または特例で猶予・納税免除になっている状態です。
農地を売却したからといって“相続税を追加で払う”ということは基本的にありません。
ただし、特例で猶予されていた相続税が“取り消し”になる場合があるため、注意が必要です(後述)。
2. 農地売却と「譲渡所得税」の仕組み
売却益=「譲渡所得」には税金がかかる
農地を売ると、その**売却価格−取得費用=利益(譲渡所得)**に対して税金がかかります。
例:
農地を3,000万円で売却
取得費(購入費+造成費など)が500万円
→ 利益:2,500万円
この2,500万円が譲渡所得とみなされ、以下の税率が適用されます。
税率(2025年現在)
所有期間 | 所得税 | 住民税 | 合計 |
5年以下(短期) | 30% | 9% | 39% |
5年超(長期) | 15% | 5% | 20% |
※特定の条件で「軽減税率」や「特別控除」が使える場合あり。
農地にも特例はある?
農地は居住用不動産と違い、売却に対する特別な控除が少ないのが特徴です。
ただし、以下のような特例が使える可能性があります。
3. 相続した農地の売却に使える特例・制度
(1)相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例
相続人が、相続開始から3年10か月以内にその農地を売却した場合、
相続税で支払った金額の一部を「取得費」に加算できる制度です。
これにより譲渡所得が減り、所得税・住民税を節税できます。
✅ ポイント:
相続税の申告をしていることが前提
農地に限らず、他の資産にも使える
一度しか使えない
(2)農地の納税猶予制度を使っていた場合
「農業を継ぐ子が農地を相続する」場合に使えるのが、農地等の納税猶予制度です。
これは、農業を継続することで、相続税の納付を猶予・最終的には免除してもらえる制度です。
しかし!
農地を売却すると、農業をやめたとみなされ、猶予が打ち切られて相続税を払うことになる可能性があります。
✅ つまり、「売却前に猶予解除の影響を必ず確認する」ことが重要です。
4. よくある質問(FAQ)
Q1:売った農地にかかる相続税をもう一度払わなきゃいけないの?
→ いいえ、基本的には不要です。
すでに相続時に支払っていれば、売却時に相続税が二重に課されることはありません。
ただし、納税猶予制度を使っていた場合など、「相続税の支払いが猶予されている」場合は、
売却で猶予が解除され、改めて納税が発生するケースがあります。
Q2:農地を相続してすぐに売ると節税できる?
→ 「取得費加算の特例」が使えれば、節税の可能性があります。
ただし、取得費が不明確(古い農地など)だと、利益が大きくなり税額が増えることもあるため、
税理士と相談しながら売却タイミングを見極めることが重要です。
Q3:農地を売って得たお金は、次の相続に影響する?
→ はい。現金として次の相続財産になります。
農地は評価額が低く抑えられやすいですが、現金はそのまま相続財産に加算されるため、
次の相続税の負担が重くなる可能性もあります。
→ 節税対策には、贈与・投資・保険の活用などを合わせて検討しましょう。
5. 農地売却と相続税の注意点まとめ
注意点 | |
相続税の支払い済みか? | すでに払っているか、猶予中かで取扱が異なる |
取得費が不明確でないか? | 長期保有の農地では取得費が不明確なことが多く、利益が膨らみやすい |
売却タイミングは適切か? | 相続から3年10か月以内なら「取得費加算」が使える可能性あり |
納税猶予制度を使っていないか? | 農地を売ると猶予が解除され、相続税が発生することもある |
売却後の資産管理は? | 現金化したら次の相続への備えもセットで考える |
【まとめ】農地の売却は、相続税との「関係の整理」がカギ!
農地を売ること自体に相続税が新たに課されることは基本的にありません。
しかし、
相続時の納税猶予
譲渡所得税
取得費の加算特例
次の相続への備え
など、多くの制度と複雑に関わっています。
✅ まずは「自分が相続した農地の状況を正確に把握する」こと
✅ そして「税理士・行政書士・不動産の専門家」と相談しながら、無理のない方法で進めることが大切です。
農地は「相続の場面」で大きな意味を持ちます。
将来に残す資産だからこそ、正しい知識と準備が、あなたと家族を守ってくれます。